もくじ
現役ファイナンシャルプランナーが教える学資保険4つのデメリット
子どもの教育資金の貯蓄方法で、最も人気ある学資保険。他の貯蓄方法と同様、メリットと同時にデメリットもあります。
メリットばかりに目を向けるのではなく、デメリットもしっかりと理解したうえで学資保険があなたに合っているのかどうかを検討しましょう。
大学授業料が今後増加する?
2015年末に文部科学省が、2031年度に国立大学の授業料を年間93万円にするという試算を行い、大きな話題となりました。
その後、文部科学省は2031年までの15年間で約40万円もの大幅な値上げをすることはないと明言しましたが、このニュースで多くの人の頭の中に「これから大学授業料が少なからず増加する」という不安が残りました。
実際に約40年前は、国公立の大学授業料は年間約3万6千円でした。現在は国公立大学に通っても年間の授業料は約54万円というのが現状。徐々にですが、国立大学の授業料と私立大学の授業料の差が埋まってきているんですね。
学歴社会と言われているにもかかわらず、大学に通学することが難しくなり、現在、大学生を持つ家庭の半数が奨学金を借りないと大学に行けないという事実。
奨学金のほとんどは有利子なので、多くの子供は大学卒業と同時に約500万円の借金を背負うことになるのです。
これからグローバル社会が加速すると、さらに海外留学や海外大学進学などが求められることになるかもしれません。
どうやって貯蓄すればいいの?
大学授業料増加が進んでいる中、将来的に必要な金額を予想することは極めて難しくなっています。そのためにも子供の教育費用はしっかりと余裕をもって確保しておく必要があるのです。
もしかしたらあなたやパートナーは大学生時代に借りた奨学金を現在進行形で返済しているのでは?
想像してみてください。あなたの子どもが奨学金返済に加えて住宅や車のローンなど、月々の家計をやりくり。さらに、自分の子どもの教育費用貯蓄を行うなんて、難しいですよね。
計画的にしっかりと教育費用を貯金することを可能にするサービスがいくつかあります。
学資保険もそのサービスの1つです。学資保険を利用することで得られるメリットはたくさんあります。
しかし今回は、メリットだけではなく、デメリットにも目を向けていきましょう。
学資保険のデメリット
学資保険は最もポピュラーな教育費用貯蓄方法の1つ。加入することで様々なメリットが得られます。
メリットについてはこちらの記事を参考にしてください。
参考⇒学資保険に入る前に知りたい4つのメリット~現役FPが教えるお得ポイント
しかしどんなに優れた金融商品にもデメリットは必ずあります。ここからは学資保険に加入する前に知っておくべきデメリットを紹介します。
1.元本割れする可能性がある
学資保険選びを行う上で絶対に知っておきたい言葉が2つあります。
それが「返戻率」と「元本割れ」。返戻率とは、支払った保険金に対して受け取る金額のこと。
返戻率は、各商品の説明やパンフレットに必ず記載されています。返戻率が100%ならば、支払った金額と同額のお金を受け取るということです。
つまり返戻率が100%を超えていたのならば支払った金額よりも多い金額を受け取る、返戻率が100%を下回っていれば支払った金額よりも少ない金額を受け取ることになります。
この支払った金額よりも少ない金額を受け取り、損する状態のことを元本割れと言います。
現在販売されている学資保険のほとんどは返戻率が100%を超えていますが、元本割れを起こすケースがあります。
一つには、契約者に万が一のことがあった場合の補償や、子どもが入院した時の補償など、学資保険にたくさんの特約を付けてしまうことによって起こります。
学資保険は貯蓄型保険といわれていますが、これらの特約には貯蓄性はなく、掛け捨て。毎月コツコツと支払っている保険料の中に、この特約の料金が加えられているのです。
得する特約かどうか見極めよう!
学資保険で加入できる特約は、それほど魅力的なものではありません。
例えば、医療補償などは不要でしょう。最近では、子どもの医療費が無料になっている自治体もありますし、他の保険で効率よく補償を受けることができることができるからです。
一つの例外が「保険料払込免除特約」。契約者が死亡した場合に、それ以降の保険金の支払い義務がなくなり、満期金を受け取ることができるというものでしょう。ほとんどの学資保険では、この特約がセットになっていますが、選択制になっている場合は、付けておいた方がいいでしょう。
もし、あなたが学資保険に死亡保険や医療保険のような機能を求めるのならば、特約をたくさんつけても構わないでしょう。しかし、元本割れを起こすことは知っておかないといけません。
後ほど学資保険の返戻率の上げ方と元本割れを起こしている学資保険に加入している方ができることを紹介します。
2.インフレに弱い
学資保険のデメリットのひとつに、インフレに非常に弱いという点があげられます。
インフレとは、好景気で需要が急速に高まった時にモノやサービスの価格が上昇する現象です。
一方で、学資保険は契約時の利率がずっと固定されたままという性質があります。つまり好景気になっても、不景気になっても利率は同じ。保険料を支払い続ける約18年間という長い年月の間にデフレがインフレになる可能性は否定できません。インフレが起きた場合には、学資保険の価値は大きく下がってしまいます。
例えば、200万円の学資金を受け取るプランに加入した場合、満期を迎える大学入学の年に200万円を受け取ることができます。ここから、入学費用、初年度の授業料、大学受験費用などを支払う予定をしていたとしましょう。
インフレが起き、費用が10%増加したらどうなりますか? 必要となる金額は220万円となります。つまり20万円不足してしまうのです。
このように、利率が固定される学資保険では受取総額は変わらないので、資金不足に陥る可能性が出てくるのです。
将来的に経済がどうなるのか予想することは、難しいです。学資保険に加入するときには損をする可能性もあるということを念頭に入れておきましょう。
3.簡単に引き落とし・解約できない
学資保険に加入すると、毎月決まった金額を最大で18年間積み立てていくことになります。実はこの積立金は簡単に引き落とすことができません。
基本的に、中学入学や高校入学時などのある程度の資金が必要となる時期に祝い金として、10~20万円程度受け取り、大学入学の年もしくはそれ以降に満期金を受け取ることができます。
しかし、祝い金と満期金以外で積み立てたお金を引き落とすことは絶対におすすめできません。決められた時期以外にお金を受け取ることができないということは、言い換えれば強制的に貯蓄を続けなければいけないということです。
この貯蓄したお金を簡単に引き出すことができないという性質をメリットと捉えるか、デメリットと捉えるのかは受け取り方次第でしょう。
貯蓄が苦手な方や、経済的状況が辛いときでも学資保険に手をつけることは絶対にしたくないという方には大きなメリットとなるはずです。
中途解約すればどうなる?
また、中途解約を簡単に行えないというデメリットも知っておかないといけません。
実際には解約はできるのですが、ほとんどの場合、元本割れを起こしてしまうのです。
中途解約の手続きが完了すると、解約返戻金と呼ばれるお金を保険会社から受け取ることができますが、この解約返戻金は、あなたが何年間学資保険に加入していたかによって受け取る金額が変わってきます。
加入時期7年未満で特約を全くつけていない状態で中途解約を行うと、ほとんどの場合、元本割れしてしまいます。7年以降でも、支払ってきた金額と同額が戻ったらいい方でしょう。
学資保険に加入する際には、決められた期間が来るまで何があっても積立金を引き出さない、支払総額を払い終えるまで絶対に中途解約をしないという強い意志が必要となります。
なかなか中途解約はできないので、最初の学資保険選びは重要です。
各社の学資保険のメリット・デメリットをじっくりと比較検討して、将来的に払い続けることができるプランを選ぶことが重要となります。
4.保険会社が経営破綻しても全額ペイオフされない
保険会社も一企業なので、当然経営破綻する可能性はあります。
加入している保険会社が経営破たんした場合には、満期金が減額されたりする可能性があります。
銀行が経営破たんした場合には1,000万円まではペイオフされることが決まっています。しかし生命保険会社は違います。
保険会社は生命保険契約者保護機構というグループに加入しています。この機構のおかげで、保険会社が経営破綻しても契約者は責任準備金の90%をペイオフとして受け取ることができます。
言い方を変えれば、保険会社が破綻した場合には責任準備金が全額負担されるのではなく、10%失ってしまうということです。
また経営破綻した会社を引き継ぐ保険会社は利率を下げることが可能となっています。予定利率が引き下げられるということは、保険料が増額してしまうという可能性があるということです。
破綻するという可能性は非常に少ないでしょうが、破綻するリスクがあることは知っておきましょう。
学資保険の返戻率を上げる方法
学資保険の最大のデメリットは元本割れする可能性があるということですが、返戻率を上げることはできるのです。
学資保険に加入する際には、今回紹介する返戻率を上げる方法をぜひ試してみてください。
保険料の支払い方法を工夫する
学資保険契約を行うときには、どのように保険料を支払うのか、いつまで保険料を支払うのかを決めます。
- 保険料の支払い方法・・・毎月払い、3か月払い、半年払い、年間払いを選択します。返戻率が高い支払い方は年間払い、返戻率が上がらない払い方は毎月払いです。
- 保険料の支払い期間・・・払い込みが終わる時期を契約時に決めます。保険料の払い込みは、早く追えるほどに返戻率は高くなりますが、期間が短い分、月々の保険料は高くなります。
現在の経済状況や将来設計を考えて払込期間を選びましょう。
保険会社によっては一括で保険料の支払いを終えることができます。
この場合は、返戻率は大きく高まります。しかしあまり現実的ではないので、まずは短期払込ができるのかどうかを検討してみましょう。
各保険会社の学資保険デメリット解説
各保険会社が販売する学資保険のデメリットを紹介します。
保険会社によって学資保険の特徴が違えば、デメリットも違います。主な生命保険会社6社が販売する学資保険のデメリットを解説いたします。
ソニー生命・学資保険のデメリット
数ある学資保険の中でも、最も人気が高いと言っても過言ではないのが、ソニー生命が販売する学資保険です。
人気の理由は、貯蓄性の高さ。返戻率は平均して110%を越え、場合によっては120%を超えることもあります。
さらに2017年4月から円だけではなく米ドルで備えるプランも誕生しています。
このソニー生命保険の学資保険のデメリットは、次の通り。
1.ライフプランナーと面談する必要があるということ。
ライフプランナーとは、保険や金融などに関する深い知識を持ち合わせた専門家のこと。学資保険に加入するまでに、何度か打ち合わせが必要となるため、すぐに加入はできません。また、このライフプランナーはソニー生命保険に所属しています。
必要ない保険を勧められるということはありませんが、学資保険の他に必要な保険があれば、ソニー生命保険が販売している金融商品を勧められる可能性はあります。他社の金融商品を勧めることはありません。つまり、中立の立場ではないということです。
2.クレジットカード払いができない
ソニー生命保険学資保険は、クレジットカード払いに対応していません。保険料を支払いながらクレジットカードポイントも貯めたいという方にはデメリットになります。
アフラック・学資保険のデメリット
CMでおなじみのアフラックの学資保険も人気が高いです。
クレジットカード払いに対応している、払込期間を選べるなどが人気の理由です。そんなアフラック学資保険が持つデメリットは次の通り。
1.返戻率が低め
アフラックの学資保険は、返戻率が100%前後と他社と比較すると低め。保険料払込期間を短くすることで、返戻率が110%近くになる場合もありますが、ほとんどの場合は100%前後、元本割れを起こすことも珍しくはありません。
例えば、満期で240万円を受け取れるプランではー
- 18歳で支払いが終える場合には、月々の保険料が11,544円、払込保険料総額2,493,504円、返戻率は96.2%です。
- 10歳で支払いが終える場合にも、月々の保険料が20,368円、払込保険料総額2,444,160円、気になる返戻率は98.1%と元本割れを起こしています。
ちなみに同じ条件でソニー生命保険の学資保険を利用すると、返戻率は110%を超えます。
2.契約者の年齢制限
高齢出産や晩婚化が進んでいる現代では、学資保険に加入する契約者の年齢も上がってきていますが、学資保険に加入できる契約者の年齢に制限があります。
55歳か60歳以上は加入できないという年齢制限を設ける学資保険が多い中、アフラックの場合はさらに厳しくて、基本的に満18歳~満50歳まで。プランによっては満37歳までしか契約できないものもあります。
フコク生命・学資保険デメリット
110%近い返戻率、兄弟割引など消費者視点のサービス内容が人気のフコク生命の学資保険が持つデメリットは以下の通り。
満期保険金をもらえる時期が22歳
フコク生命の学資保険は返戻率も安定しており、サービス内容もユニークで人気です。でも、満期保険金受取時期が通常とは異なります。
フコク生命の学資保険は、⓵ステップ型⓶ジャンプ型の2種類があります。
⓵ステップ型・・・入園・入学時に成長金、大学入学時に祝い金として80万円、満期保険金100万円は22歳の時に受け取ります。
⓶ジャンプ型・・・大学入学の年に祝い金100万円、22歳の時に満期保険金100万円を受け取ります。
学資保険は、通常、大学の教育費として貯蓄する人が多いですから、満期保険金を22歳というのは大きなデメリットと言えます。22歳というと、普通に大学に通学すれば社会人になる年ですから、それよりも大学入学の年に満期金を受け取り、入学に必要な費用をまかないたいと思う人の方が多いはずです。
日本生命・学資保険のデメリット
「ニッセイ学資保険」は返戻率が110%前後と非常に高く、祝い金あり型と、なし型を選べるなどの特徴もあります。発売から3年間で20万件もの販売実績があるように、人気が高い学資保険です。しかし、この商品にも例外なくデメリットはあります。
厳しい年齢制限
ニッセイ学資保険は子ども祝い金あり型となし型を選ぶことができますが、祝い金あり型に加入できる被保険者の年齢は0~2歳、契約者の年齢は男性で18~39歳です。そのため祝い金ありバージョンに加入できないという方が多いかもしれません。
また祝い金なし型を選んでも、保険料払込期間によって契約者の年齢制限が変わってきます。
5年で払い込みを終える場合には18~60歳、もしくは67歳の方まで契約できます。
しかし10年の払込期間になると18~45歳まで、学資年金開始年齢までの払い込みになると18~45、もしくは40歳の方までしか契約できません。この年齢制限の厳しさはデメリットと言えます。
JA共済・学資保険のデメリット
JA共済の学資保険こども共済は高い貯蓄性に加え、子供の加入年齢が0~12歳と幅広いのが特徴です。こども共済のデメリットは以下の通り。
1.元本割れを起こす可能性がある
こども共済は、プランによっては元本割れを起こす可能性があります。
- こども共済「すてっぷ」・・・最も返戻率が高い。
- こども共済「にじ」、「えがお」・・・子どもの死亡補償が手厚く、元本割れを起こす可能性が高い。
貯蓄型保険である学資保険に、補償を求めるのは得策ではありません。こども共済を選ぶときには「すてっぷ」を選択するべきです。
2.年払いを行う必要がある
学資保険では月払いを行うよりも、年払いを行った方が返戻率は高くなります。その返戻率は、ほとんどの場合、1~2%程度ですが、こども共済の場合には5%も変わってきます。
例えば、契約者を30歳男性、共済金額を200万円と設定した場合、払い込み方法を月払いにした時の返戻率は88.4%。一方、年払いにすると返戻率は92.3%と約4%もあがるのです。
そのためこども共済に加入するならば、よほどの事情がない限り年払いを行うのをおすすめします。
かんぽ生命・学資保険デメリット
郵便局の学資保険として有名な「はじめのかんぽ」。3つのコースから自分に合ったものを選ぶことができる、妊娠している時から加入できるなどの特徴があります。
はじめのかんぽのデメリットは以下の通りです。
低い返戻率
「はじめのかんぽ」の返戻率は、以前は100%を切っていましたが、返戻率の改定が行われたので、元本割れするケースは少なくなりました。それでも他社と比較すると返戻率は低いです。
返戻率110%近くなって魅力と言えますが、はじめのかんぽで返戻率が110%近くになるケースはほとんどありません。この低い返戻率はデメリットと言えます。
保険の見直しを行うのもひとつの手段
もしかするとあなたがすでに加入している学資保険は元本割れしているかもしれません。返戻率の計算式は以下の通りなので、加入している方は1度計算してみてください。
返戻率=給付金受取総額÷保険料支払い総額×100
この計算式で返戻率を出して、100%を下回っている場合は元本割れを起こしています。
元本割れを起こしている学資保険に加入している場合、できることは2つ。そのまま保険金を支払い続けるのか、保険の見直しを行うかです。
学資保険に加入して数年であるのならば、他の学資保険に乗り換えた方がお得ですが、ある程度の年数以上、保険金を支払い続けているのであれば、細かな計算をしてみる必要があります。
乗り換えることで損をする可能性もあります。学資保険に限らず、保険の見直しは細心の注意を払って行う必要があります。
保険の見直しはFPに頼むのが1番
結論として、保険の見直しはFP(ファイナンシャル・プランナー)に協力してもらうのが1番です。
簡単に言えば、FPはお金の専門家。FPは保険のことはもちろん住宅ローン、教育資金、税制など幅広い分野の知識を持ち合わせています。
どの保険会社にも所属していないFPに保険の見直し相談を行うことによって、中立的な立場で各金融商品のメリット・デメリットを解説し、あなたの要望に合った商品を紹介してくれます。
普段、保険と携わる事がない一般の人が、保険の見直しは複雑で難しいです。無料でFPに相談できるところもあるので、そういったサービスを活用するのが1番でしょう。
もちろん保険の見直しだけではなく、保険選びの相談も可能です。
学資保険のデメリットまとめ
学資保険のデメリットで最も気を付けるべきことは元本割れを起こさないようにすることです。
これは学資保険選びの段階で防ぐことが可能です。基本的には必要以上の特約を付けることさえなければ、元本割れは起きません。
学資保険に加入する前には、今回紹介したデメリットも受け入れないといけません。ぜひ今記事を参考に学資保険加入を検討してみてください。