子育てと学資保険

こども保険は必要か?自民党小泉進次郎氏の目論見と学資保険との違い

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こども保険は必要か?学資保険との違いと小泉進次郎氏の目論見とは?

 

2017年になってから、よく報道されている「こども保険」。これは、小泉進次郎氏をはじめとする若手議員で構成される委員会が提案する新たな教育制度のことです。

目的は、幼児教育・保育の無償化。学資保険とは、どうやら性質が違うようです。

今回はこども保険の説明、2つの問題点、教育国債や学資保険との違いまで詳しく解説します。

【自民党】小泉進次郎氏が提案するこども保険とは?

自民党の「2020年以降の経済財政構想小委員会」は小泉進次郎議員を事務局長とし、若手議員で構成される委員会です。2020年以降の経済や財政について議論を進めている同委員会は、先日、こども保険を創設する構想を発表しました。

こども保険を簡単に言えば、幼児教育・保育にかかる費用を無償化にするという試み。現代社会にはさまざまな問題がありますが、その中でも緊急に解決するべき問題が、待機児童や経済格差によって子どもが必要な教育を受けることができないということ。

それを解決しようとするのが、こども保険というわけです。どうやって幼児教育・保育の無償化を実現化するのかというと、既存の社会保険料を上げて、そのお金で幼児教育を無償化するというのです。

つまり、小泉進次郎氏らは子育てのための社会保険「こども保険」を設立しようと提案しているのです。

社会保険とは?

社会保険とは、国民の生活を保障するための公的な保険です。民間の保険会社が販売する保険とは異なり、所定の条件を満たす国民は社会保険に加入して保険料を納める義務があります。

社会保険で有名なものは、以下の3つ。

・年金保険
・健康保険
・介護保険

社会保険とはその名のとおり、社会全体で国民1人1人を支えていこうという保険なのです。

会社勤務経験がある方はお分かりだと思いますが、毎月のお給料から保険料が差し引かれますよね。

こども保険が設立された場合、どのくらい負担が増えるの?

こども保険が設立された場合、勤労者の保険料の負担が増加します。保育・幼児教育を無償化のための保険料となると、かなり大きな負担になるのでは、と疑問に思う人も少なくないでしょう。

しかし、発表された設計案ではそれほど大きな負担になりません。

以下が、平成29年3月に「2020年以降の経済財政構想小委員会」が発表したこども保険の制度設計案です。

保険料率0.1%案 保険料率0.5%案 保険料率1.0%案
保険料率 勤労者0.1%

事業者0.1%

※国民年金加入者は月160円程度

勤労者0.5%

事業者0.5%

※国民年金加入者は月830円程度

勤労者1.0%

事業者1.0%

※国民年金加入者は月1,670円程度

財源規模 約3,400億円

(未就学児1人当たり月5,000円相当)

約1.7兆円

(未就学児1人当たり付き2万5,000円相当)

約3.4兆円

(未就学児1人当たり付き5万円相当)

使途例 ・幼児教育・保育の負担軽減

小学校入学前の子ども(約600万人)に対し、児童手当を1人当たり月5千円加算

(バウチャーもあり得る)

 

・待機児童ゼロ

保育所等の受け皿拡大(現在の待機児童は推計約9万人)

年収360万円以下世帯の保育量を完全無償化 等

幼児教育・保育の実質無償化

小学校入学前の子ども(約600万人)に対し、児童手当を1人当たり月2万5千円加算

(バウチャーもあり得る)

幼児教育・保育の実質無償化

より踏み込んだ政策

(第一子に対する支援強化等)

出典:こども保険の導入

こども保険計画は、3つのステージで構成されています。

まず最初のステージでは、保険料率は0.1%で開始されます。30代・年収400万円・子ども2人世帯の場合だと、月240円の負担、年収800万円の世帯の場合は、月500円の負担になります。

さらに雇用保険料は、平成28年度と平成29年度に0.1%ずつ引き下げられるので、雇用保険で引き下げられた分をこども保険に回すと考えることができます。

児童手当はこのように変わる

こども保険が実施されれば、児童手当の受取額が増えます。児童手当とは、子どもを持つ家庭に毎月行政から支給されるお金のことです。

児童手当の対象となるのは、0歳から中学校卒業までのこどもがいる家庭。以下が、こども保険が実施された場合の児童手当の受け取り額です。

こども保険が実地された場合の児童手当受取り額

児童手当支給者対象年齢 現行の児童手当 児童手当+こども保険給付金0.1%案 児童手当+こども保険給付金0.5%・1.0%案
0~3歳未満 一律1万5千円 一律2万円 一律4万円
3歳~小学校修了まで 第1子・第2子:1万円

第3子以降:1万5千円

第1子・第2子:1万5千円

第3子以降:2万円

第1子・第2子:3万5千円

第3子以降:4万円

中学生 一律1万円 一律1万円 一律1万円
所得制限以上 一律5千円 一律1万5千円 一律3万円

こども保険の給付金は、中学生は対象にならないので、中学生に対しての給付金額は変わりません。

保育園の保育料の平均が月2~3万円、公立幼稚園の場合は約1万円、私立幼稚園の場合は約2.5万円です。こども保険金0.5%案が実現されると、実質的に保育園・幼稚園の保育料が無料になるということです。

こども保険の概要まとめ

ここまでこども保険について説明してきましたが、少し複雑で難しいですよね。

そこで、頭の中を整理するためにも一旦まとめてみましょう。

目的 幼児教育・保育の実質無償化
保険の種類 社会保険
保険料負担者 勤労者と企業
保険料率 保険料率0.1%案

保険料率0.5%案

保険料率1.0%案

使途例 【保険料率0.1%案】

幼児教育・保育の負担軽減

待機児童ゼロ

【保険料率0.5%案】

幼児教育・保育の実質無償化

【保険料率1.0%案】

幼児教育・保育に実質無償化

より踏み込んだ政策

運営者

こども保険2つの問題点

幼児教育・保育を無償化にしようとするこども保険は、一見すると問題点のないいいアイデアのように思われます。

しかし、重要な問題点が2つだけあります。それが、不公平な保険になることと、そしてリスクに対する考え方。

特に、子どもを持たない世帯も保険料負担の対象となるので、保障を得ることがないのに保険金を払い続けるということは大きなデメリットになること間違いありません。

1.不公平な保険となる

保険の基本的な原理としては、契約者が保険料を納めることによって、保障を得ることができるということです。つまり、保険料の負担者が保障を受け取るという構図です。

しかし、こども保険ではこの構図が成り立ちませんよね。

保険料の負担者である勤労者全員が子どもを持っているというわけでもなければ、将来的に子どもを持つとは限りません。また、就学中の子どももこども保険の対象外になるということに気を付けなければいけません。

保障を得ることがない保険のために、保険金を払い続ける人も出てくるというわけです。毎月の負担は大きなものではありませんが、約40年間の勤労期間で考えると大きな負担になります。

仮に30年間、毎月280円のこども保険料を負担するとしましょう。

280円×12か月×30年=100,800円

合計で約10万円の負担となります。

保障を受けることがない保険のために、10万円も払うと考えると大きなデメリットとなるでしょう。保障を受けることがない世帯、特に教育費用がかかる就学中の子どもがいる世帯の理解を得ることが大きな課題です。

2.出産・子育てがリスクという考え方

こども保険案が発表されたときに、多く見られた疑問や批判の声は「子ども・子育てはリスクなの?」というものです。

子どもを持つことはリスクではありませんよね。そもそも、公立小学校・中学校への通学は誰でもできるのに、なんで幼稚園・保育園はこども保険を設立しないと通園できないのでしょうか?

リスクに対する考え方だけではなく、そもそもこども保険以外の方法で幼児教育・保育を無償化できないのかという疑問が浮かんでしまいます。

こども保険ではなく、教育国債という考えもある

教育に対する改革を進めようとしているのは、「2020年以降の経済財政構想小委員会」だけではありません。同じく、自民党からは教育国債という案も出てきています。

安倍首相は、誰もが高校・大学に進学できる環境作りを目指しています。教育国債の特徴は、負担が先送りにされることです。つまり教育国債によって、幼児・保育教育だけではなく、高校・大学の教育費が無償になっても、将来的に若い世代がこの負担を返さなければいけません。言い換えれば、教育国債とは国が発行する借金のことです。

負担を今受けるのか、それとも将来受けるのかがこども保険と教育国債の大きな違いです。

どちらも教育無償化を目指すという目的を持っていますが、こども保険では親世代が負担を受けて、教育国債では子ども世代が負担を受けるということですね。

「2020年以降の経済財政構想小委員会」のメンバーたちは、教育国債は子どもたちへの借金になると懸念をしています。

一方で、教育国債は子どもたちへの投資と考えている人が多いのも事実です。投資には見返りがつきもので、十分な教育を与えた子どもたちが活躍するという大きなリターンにつながります。そのため、教育国債は決して悪い考えではありませんし、実際のところ、教育国債のほうがこども保険よりも現実味があるという見方が大多数です。

こども保険と学資保険は全然違うことに注意!

こども保険と学資保険では、そもそもの目的が違います。

  • こども保険・・・幼児教育・保育を無償化するという目的
  • 学資保険・・・大学などの教育費用に備えることが目的
貯蓄性にも違いがある

こども保険には学資保険最大の特徴である貯蓄性がありません。

多くの学資保険は貯蓄性があり、支払った保険料総額よりも受け取り総額のほうが多くなります。その貯蓄性は返戻率という数字で表され、返戻率が100%を超える学資保険は貯蓄性があるといえます。

保険料払い込み免除特約

学資保険には他の保険にはない保険料払い込み免除特約があります。保険料払い込み免除特約とは、契約者の死亡保障です。

契約者が死亡したり、所定の重度障害状態になったりすると、その後の保険料の支払いが免除され、子どもは予定通り学資金を受け取ることができるというものです。

契約者である親に万が一のことが起きても、子どもは学資金を受け取ることができるという保障を実現した特約です。

結論・学資保険とこども保険の違い

こども保険は、学資保険の代用には絶対になりません。こども保険が実現しても、教育費用はしっかりと貯めるようにしましょう。教育費用に備える方法はいくつかありますが、貯蓄性と万が一の時に備えることができる学資保険はいい選択肢になること間違いありません。

ちなみに、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命が販売している学資保険の商品名も「こども保険」です。名前こそ同じではありますが、小泉氏らが提唱するものと内容は全く違います。

損保ジャパン日本興亜ひまわり生命のこども保険については、他の記事で解説しているので、ぜひ目を通してみてください。

こども保険の結論は2017年内に出る

2017年5月23日に、自民党の「人生100年時代の制度設計特命委員会」はこども保険に関する中間とりまとめを行いました。こども保険の制度を本格的に検討し、2017年内に結論が出される方針が明かされました。

これまで、こども保険の知名度は低かったのですが、今後は本格的に検討されるため、一躍注目を浴びることになるでしょう。

これからの動向に注目し続けたいですね。

こども保険まとめ

小泉進次郎氏が提案するこども保険の目的は、幼児教育・保育の負担を軽くし、最終的には無償化することが目的です。

今回はこども保険を中心にたくさん解説を行いましたが、特に押さえていただきたいポイントは以下の4つです。

・こども保険が実現すると、幼児教育・保育が実質無料になる
・こども保険の負担者は企業と勤労者
・教育国債との大きな違いは、親世代が負担を受けるのか、子ども世代が負担を受けるのかということ
・学資保険の目的は教育費用を備えることで、こども保険とは全く違う

こども保険が実現するにせよ、そうでないにせよ、子どもが自由に平等な教育を受けることができる社会が実現するのを望むばかりです。

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